もったいないブログ

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「桜の咲く頃にはいつも思いだす…」episode-15


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山中の草原で咲き誇る桃色の桜の樹の画像
こんにちはscene(シーン)です✋

 

前回の続きからどうぞ👇

 

心の隙間

 

僕はしばらくの間、声をかけることもできなかった。

 

あんなに幸せそうな顔で寝息をたてていたのに、突然泣き出した彼女の心境を理解するのにかなりの時間がかかった。

 

 いや、心境とは嘘になる、心境など理解できていない。

 

この状況を理解するのにやっとだ。

 

そんな状態のまま、彼女を自宅まで送っていく。

 

自宅前に到着した時にはだいぶ気持ちも落ち着いたみたいだったが、表情は暗いままだった。

 

さすがにそのまま帰るわけにはいかず、その日は彼女が寝付くまで側にいた。

 

僕はそっと彼女の家を出て、車に乗り込みエンジンをかけて、大きく2回ため息をつく。

 

長時間運転の疲労とは別の心労でめまいがする。

 

そんな自分に気合いを入れて、車を発進させる。

 

自宅までの道のりでいろんな思いや考えが頭の中を駆け巡る。

 

自業自得なのだけど、正直言ってこの旅行での疲労感はハンパない。

 

終わりよければすべて良しだったのに、彼女の心の隙間を埋める事ができたとは到底思えない。

 

これからどうすればいいのか?

 

どうしたらいいのか?

 

わからない。

 

旅行に行く前の状況と全く変わっていない。

 

どれだけ考えても答えは見つからず、自宅に到着してベットに入っても、結局朝まで一睡もできなかった。

 

翌朝彼女に様子伺いの電話をする。

 

「おはよ。大丈夫?」

 

「うん。大丈夫。昨日疲れてるのにごめんね。」

 

「いや、俺は大丈夫やけど。」

 

「また変な夢見たって言ってたから…。」

 

「うん。もう大丈夫やから、心配せんといて。」

 

「そっか。ならいいんやけど。」

 

「じゃあそろそろ出る準備するわ。」

 

「私もする。」

 

「また仕事終わったら電話するわ。」

 

「あっ、今日友達と会う約束あるから、家帰ったら私からかける。」

 

「そっか。わかった。ほんじゃね。」

 

「うん。仕事がんばってね。」

 

「ハイハイ、ほんじゃね。」

 

彼女は大丈夫だと言っているが、やはり声に元気がない。

 

そしてその夜約束どおり電話がかかってくる。

 

「もしもし、ごめんね、遅くなって。寝てた?」

 

時計を見ると午後11:30をまわっている。

 

「いや、大丈夫。起きてたで。」

 

「あんなぁ、何か色々話してるうちに時間が過ぎてて遅くなってん。」

 

「うん。いいやんか。久しぶりに会ってんやろ?」

 

「そうやねん。」

 

「それでなぁ、何かなぁ、その友達今彼氏いてへんらしくて、誰かいい人いてへんかなぁって言っててんけど…。」

 

「Kの友達で誰かいてへん?」

 

僕は他人のお世話をしてる場合じゃないと思いながらも、

 

「誰かいてへんか、さがしとくわ。」

 

「ありがと。その娘めっちゃ良い娘やから。かわいいしぃ。」

 

多少なりとも彼女の声のトーンが、朝よりもマシだったので、僕はこんな事をしてる場合じゃないと思いながらも、これはこれで関係修復への何かのキッカケになるのではないかと思うようにした。

 

そう簡単に信頼を取り戻す事はできないのだから、ひとつひとつの積み重ねが大切だ。

 

そして後日、今行っている仕事場の同僚Aを紹介することにした。

 

付き合いは浅いが、中々会話上手で面白いヤツだ。

 

彼女の友達も明るくて面白い娘らしいのでちょうどいいのではないかと思った。

 

当日は梅田のビッグマン前で待ち合わせとのことで、僕は彼女と一緒に行った。

 

僕達が到着した時にはもうすでに2人は来ていて、腕時計を見返したが、針は待ち合わせ時間よりも20分ほど前を指していた。

 

「おう!はやいなあ。」

 

「余裕をもって出たら、ちょっとはやく着き過ぎてん!」

 

「ほんまか!」

 

「えっと、彼女さん?」

 

「あー、そうそう、H子。」

 

「はじめましてぇ、Kがいつもお世話になってまーす。」

 

「いえいえ、いつもお世話してます、Aでーす。」

 

「なんでや!俺はお世話されてんのかい!」

 

「それより、今日の主役の…えっと?」

 

「あっ!こちらが友達のE美。」

 

「はじめましてぇ、E美です。」

 

「はじめましてAです。」

 

「はじめましてKです。H子がいつもお世話になってます。」

 

「めんどくさいヤツでしょ!」

 

「E美ちゃんに迷惑ばっかかけてるでしょ!」

 

「そんな事ないですよー。」

 

「私の方こそいつも話聞いて助けてもらってます。」

 

「ほんとにー!」

 

僕は調子にのりすぎて彼女に小突かれる。

 

「とりあえず立話も何やし、店行こうか?」

 

僕達は梅田の東通りのこじゃれたレストランバーに入る。

 

店内は相手の顔色を伺えないほど薄暗くて、静かで落ち着くBGMが流れている。

 

席は男女に分かれ、向かい合わせで座る。

 

すぐに黒と白のシックな服装をした店員がやってきてメニューを置き、飲み物の注文を聞いて立ち去る。

 

自己紹介はさっきしたので、お互いがどういった知り合いなのか、どんな感じの人なのかを友達目線で話して紹介する。

 

あとは当人同士で会話してもらうために、僕と彼女は少し口数を減らす。

 

2人とも話し上手でもうすでに打ち解けていい感じだ。

 

その間僕は、正面に座っている彼女の顔ばかり見ていたが、別段変わった様子もなく、ニコニコ笑いながら主賓2人の会話を楽しそうに聞いていた。

 

僕は黙ってお酒を飲んでいたせいか、少し酔いがまわってきた。

 

何かしゃべらなくてはと思い、しゃべりだすとお酒の勢いもあってか、止まらなくなる。

 

Aとは何回か一緒に飲みに行った事があるが、その時のような感じで悪ノリしてはしゃぐ。

 

あまりに調子にのりすぎたので、理性を取り戻そうと思った時には、もうすでに状況は一変していた。

 

薄暗い店内のせいで、彼女の表情がしだいに変わっていくのを読みとることができなかった。

 

彼女の不安定な心は、僕の能天気な態度を見て、一気に崩壊したようだ。

 

「なぜ?」

 

と聞かれると、本当のところの理由はわからない。

 

わからないが、彼女は僕の目の前で、あとの2人も見ている目の前で突然泣きだした。

 

つづく

 

*尚、この物語は実話をもとにしたフィクションです。

 

*文中に登場する僕は筆者の友人Kでその彼女はHです。その他の登場人物はイニシャルか三人称で表記しています。

 

割れたハートの横で顔を手で覆って泣いている若い女性の画像


 


 

積み重ねた本に後ろから淡い光があたってる

小説「慈愛のこころ」

 

少年編16

 

結局この日は海水浴というより日光浴になってしまった。

 

さわやかな夏の日差しを浴び、たわいもない会話の途中で時々大笑いしては一家団らんを満喫した。

 

そして午後の3時過ぎには帰宅の途についた。

 

もちろん隆一の運転で、行きしなと同じくあとの二人は後部座席で船こぎ爆睡モードだったのは言うまでもない。

 

隆一はバックミラー越しにそんな2人を眺めながら、あの事故が大事に至らなくて本当に良かったと、あらためて思い返した。




時は流れて2年後。

 

前田家にはこれといって大きな出来事もなく、平和な日々が続き、平々凡々な家庭で隆司は自由奔放にスクスクと育っていった。

 

近頃は幼稚園にも通いはじめ、友達もできて、充実した園児ライフをおくっていた。

 

そんな友達の中に、他の子とは違う感情を抱いてしまう子が1人だけいる。

 

その子は佐藤薫ちゃんという女の子で、隆司と同じうさぎ組のマドンナ的存在だ。

 

清楚で気品があり、実家は代々続く開業医、習い事もセレブの四種の神器であるピアノに華道に茶道にクラシックバレエと筋金入りのお嬢様。

 

3時のおやつはいつもどこぞの有名店のスィーツなどが出てくるような、前田家とは比べものにならない上流階級の家柄だった。

 

そんな子に密かな恋心を抱いてしまったのだ。

 

普通なら問答無用で撃沈してしまうところだけど、以外や以外にもそのお嬢様の取り巻き連中から話は大きくなり、親友までも巻き込んで彼女との関係が深まっていくこととなる。



つづく

 

*この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

 

机の上にデスクトップパソコンと小説と飲みかけのコーヒーカップが置かれている

 

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